ジャイロゼッター「アクセラセダン」編


「超速変形ジャイロゼッター」という筐体ゲームでメカデザインを担当していました。

実在のメーカーの市販自動車が、ロボットに変形しバトルをするアーケードカードゲームです。白眉なのが、ロボットだけでなく筐体もマシンモードからロボットモードに変形しちゃうことなんです。あのインパクトは今でも忘れられません(^▽^)

◆マシンモード:ハンドルとシフトレバーで操作します。

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_人人人人人人人人_
> 超速変形!! <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄

ガコン!ギュイイイイン!ビカビカビカーッ!

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◆ロボットモード:操縦スティックがせり出してきます!ゼツボー的にかっこいいぜ!

これが変形動画だ!

 

2014年に稼働終了したため、今はもう遊ぶことはできません。スクウェアエニックスの本社に一台ぐらい残っているのかな?と思ってましたが、市村P曰くもう筐体は残っていないとのことです。とても残念でなりませんね。でも風の噂で聞いたところ…

ゲームの制作を手がけた株式会社 界グラフィックスさんの本社にまだ存在しているらしいですよ|゚Д゚)))ニュウシャスレバ…

 

  ◆

さて今回は、ジャイロゼッター「アクセラセダン」。モチーフ車種は、マツダ株式会社アクセラセダン20E

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第2弾で初登場。絶えず浮遊している姿が印象的です。尻尾の挙動がいちいち可愛くて、その愛嬌のある動きにスタッフさんのこだわりを感じました。

新型アクセラのすべて (モーターファン別冊 ニューモデル速報 第428弾)

ファンの間でカニ型なのかエビ型なのか、果てはザリガニ型なのかで揉めていたそうです。実は「ロブスター型」のジャイロゼッターでした。なぜエビやカニではなくロブスターなのか?その理由は当時もわかりませんでしたが・・・人型を外した異形のジャイロゼッターを求められているのだろうと考え、とりあえずロブスターを画像検索することから始めました。

特大活ロブスター(オマール海老[エビ])アメリカ東海岸産 450g 2尾 Treasure Mart  ロブスターの模型 リアルです ジョークグッズ

ものの見事に調理された真っ赤なロブスターばかり出てきましたwこれで理解できたことは、他のエビ類に比べてズングリむっくりで、ハサミが丸っこくって…

美味しそうだということです。

つまり「美味しそうに見える大きな鋏脚」を持つのがロブスターなのだろうと自分なりに認識しました。

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こちらは、人型形態(?)。というよりも、脚があるタイプ。第2弾の段階では、必殺技ファイナルバーストの際にちょっぴり確認できる隠し要素にすぎなかったのですが、このスタイルでの本格的な活躍は5弾分先の新2弾に登場するグレード違いの「アクセラスポーツ」の登場を待たねばなりません。

ヴェルファイア羅武流と、全然デザインラインが違うせいか・・・なぜか不特定多数のスタッフやファンの方から「アクセラって海老川兼武さんのデザインですよね?」と真顔で言われたのも懐かしい思い出です。どうみても「エビ」ゆえに、そこから氏を連想してしまったのではないかと思えなくもないぐらいエビエビしたジャイロゼッターでした。

でも実は当たらずも遠からずでして・・・「エビ」ゆえに、部分的に氏をリスペクトしたデザインラインを意識しておりましたw ある意味、思惑通りと考えていいような気がします。

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甲殻類特有の構造を突き詰めるあまり、相当ディテールが細かくなってしまいました。申し訳ないなと感じていたところ・・・3Dスタッフがモデリングに慣れてきたのもあって十分対応できるとの事。流石です。

その後、実はモデリング用の設定画は、形さえしっかりデザインされていれば、アニメ設定画のように作業効率を優先して線を減らしたりとそれほど神経質になる必要はなかった事を知ります。後半のジャイロゼッターのデザインの密度感、モデリングの細かさは本当に素晴らしかったと思います。

エビ特有の長い触覚や蛇腹の尻尾を、そのまんまの形状ではなくイメージ程度に拾い、SFメカっぽく処理していく方法を色々試していました。生き物としての構造を敢えてズラす荒っぽいデザイン処理とでもいいましょうか・・・いわば「ロブスターそっくり」ではなく「それっぽく見える」事に比重をおきました。

決め手はやはり「ぷっくり太った美味しそうな鋏脚(腕)」ではないかと思いますwこれはほかのエビ類にはないロブスターの大きな特徴です。伊勢海老とかザリガニではなくロブスターモチーフにしたゆえんはまさにそこにあったのではないかと!スタッフのエビに対する目のつけ所に改めて感服した次第です。

全部、矢薙の想像ですけど。

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側面から見ると、エビ類であることがより理解できますね。こちらは脚部のギミックのための追加側面図。膝関節がそのままホバーノズルになっています。玩具畑で修行していたのもあって、この手の構造図面を描くのは大得意な上に大好きです。

3Dモデリングされたアクセラセダンはこちら

アクセラのラフスケッチです。浮遊するロブスターというオーダーから、とりあえずのシルエット3点をささっと。ゲームの画面の収まり等を考慮しておらず、奥行のあるデザインがSFメカチックです。頭の中では、シューティングゲームのラスボスのイメージがもやもやと浮かんでいました(^^

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上記、A方向の戦闘ロボスタイルに、BとCのシャープさを加味してみるという方向性にまとまりました。

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浮遊モードから人型モードに変形することを考慮して脚部変形ギミックを検討中。この段階では、まだまだ生物的なイメージに引っ張られています。背中の蟹足デザインから、後に大きめのスタビライザーのシルエットを導き出せました。ただ、まだエビエビしすぎて今一歩も二歩も煮えきらない状態です。第一・・・

美味しそうに見えません。

徐々に形状がまとまってきました。ほぼプロトタイプ・アクセラセダンと言える姿です。このシルエットを基本に、形状やデティールを詰めていきます。

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ジャイロゼッターデザインのレギュレーションとして「タイヤを想起させる円形のデバイス」を装備する項目があり(注:厳守ではない)、丸い光輪が体の各所に見受けられます。

概ね、肩や腕、脚の側面についてるケースが多いのですが、アクセラセダンのデザインでは「正面から見せるパターン」を提案しました。肩を大きく見せる効果もあり、特徴的な個性の一つになりました。実は隠し要素として、正面から見た時目玉の大きな甲殻類のマスコットにように見えるサブリミナルな効果を狙っていました。

さらにまとめてクリンアップして赤く彩色したバージョン。色のおかげでエビらしさが引き立ちます。ほとんど決定稿と変わらないのですが・・・胸部のデザインをもっとアクセラに見せる方向にまとめて欲しいと指示をいただきました。こうして胸部左右の放熱(?)ブロックを削ぐことで、フィニッシュです。よりモチーフの自動車らしさが際立ちました。デティール量もいい塩梅でまとまって、胸周りもスッキリしました。

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市販の車両をモチーフにしているだけあって、その車種のイメージをできるだけ壊さないようにスタッフさんの間では細心の注意がなされていたようです。

序盤のこうしたやりとりのおかげで、市販車モチーフの処理でやっていいことと悪いことがはっきりしてきました。後半はそういった点でのリテイクはほぼ無くなり、作業効率が大変あがって同時に数点のデザインを進めることができました。スタッフさんも常に新しい発想を提案されるので、このゲームにかける熱い情熱を常に感じておりました。

長いスパンでのシリーズ物のロボットデザインを担当させていただけたことは、今の矢薙にとってとても得がたい経験でした。自分がこれまで培ってきたデザイン力を遺憾無く発揮することができる希な機会を与えてくださったことに、スクウェア・エニックスさんに感謝です。