
「超速変形ジャイロゼッター」という筐体ゲームをご存知でしょうか?
矢薙は、そのシリーズのメカニックデザインをしておりました。すでに稼働終了したゲームですが、スクエニ様からの了承をいただき、ゲーム用設定画稿をファンの方への感謝をこめて少しづつ当サイトにてアップしております。
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第二回はジャイロゼッター「羅武流」
愛・羅・武・勇とかいて「アイラブユー」と読むように、羅・武・流とかいて「ラブリュー」と呼びます。トヨタや日産など、実在の自動車メーカーの車種ではなく、「超速変形ジャイロゼッター」の世界に存在するエーアイカーメーカー「アルカディア社」製の機体です。主役メカ・ライバードと同じく、オリジナルのジャイロゼッターになります。
発注を受けたのはヴェルファイアからちょっと遅れたぐらいですが、ほぼ同時にデザイン作業を進めていました。
見ての通りモチーフは、俗に言う「ツッパリ」とか「ヤンキー」と呼ばれている人たちです。今時、そんな姿の不良少年を見かけることも少なくなりましたが、70年代以降の高校を舞台にした映画やドラマには必ずと言っていいほど登場していました。
タイミングよく「仮面ライダーフォーゼ」が放映されていて、その主人公が時代錯誤なヤンキースタイルだったので大いにイメージソースとなりました(^^;
- リーゼント(ポンパドール)
- 剃り込み
- 短ラン
- ボンタン
- サングラス
- 胸元のオシャレなアクセサリー
- 制服の裏の派手な柄
上記のようにヤンキー要素をできるだけデザインに落とし込んでおります。よく見ると髭もついていたりw
また、アルカディア社製とのことで、下半身はライバードの装甲形状に近しいイメージを意識しました。
羅武流最大の特徴として、頭部のリーゼント型ビーム砲(?)が際立っています。一番特徴的なポイントなので、できるだけ目立たせるためにギリギリまで大型化させていきました。おかげで、非常にキャラが立ち、シルエットだけでそれとわかるデザインにまとまったと思います。ヤンキーデザインを生かしたゲーム内のド派手なアクションもあり、ゲーム序盤の人気キャラになっていたようです。
武装のトンファーは、頭部に反して逆にシンプルなただの四角い棒にまとめました。線画の量に緩急をつけることでデザインのメリハリがついて、全体的なバランスが整います。仮にごちゃごちゃした派手なデザインのトンファーだとしたら、特徴が散逸してしまう恐れがありました。この羅武流でいえば、頭部のパックリ開いた大きな口径のビーム砲を第一の特徴として注目させ、そこから放射状に徐々に線の数を減らすよう意識します。末端の手足のデザインとトンファーをシンプルな線でまとめていくことで、自ずと線の集中した頭部胸周りに視線を誘導する効果を生み出します。
アルカディア社という架空の自動車メーカーのジャイロゼッターだったので、ロボットだけでなく自動車形態もデザインすることになります。その車モードですが、わかりやすいぐらいに族車仕様ですね。派手な外見で、敵を威嚇するような悪そうな車をイメージしています。気合の入った剃り込みのあるフロントガラス、車体側面のマフラーと、後部の竹槍マフラーが特徴的です。ゲー ムをする際、ドライビングモードでは、プレイヤーは常に車体の後ろを見ることになるので、後部のデザインにも気をつけました。よく見ていただくと「目つきの悪い男がタバコを無数に咥えているように見える」デザインにしています。
実は、イタリアの自動車メーカー・マセラティのグラントゥーリズモをイメージソースとしておりました。
モデリング参考用に、側面図を描きます。ロボットよりも車体のバランスを描くのが一番難しかったです(^^)
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羅武流のデザインラフスケッチです。UPするのすら恥ずかしい殴り書きのような画稿なんですが、担当さんとイメージの共有ができればいいので、いつもこんなものでした(^^ その分、リアクションは超速いです。速さと締切はとても大事!
こちらは、最初期のラフです。リーゼント砲のサイズを色々試してます。何パターンか提示して、担当さんの求めているイメージを聞き取りつつ、使える部分をチョイスしながらまとめていきます。おおよそのイメージはこの段階でほぼ決まっています。今にして思えば、不良らしさを装甲の形状でかっこよく見せようとやや力が入りすぎている印象です。
上記での打ち合わせを経た上での、第二段階のラフです。こちらは打ち合わせで伺ったイメージを、自分なりに噛み砕いてあーでもないこーでもないと色々描き進めている段階です。提出することもないので、当然パースなどはとってない不正確な画稿の上、逐次パソコン上で切り張りしつつプロポーションを調整してます。天からの啓示が降りてくるまで、ひたすら筆を走らせます。この段階では、まだ車モードのデザインは進めておりません。それでも竹槍マフラーの要素は入れようと思い、両肩からマフラー的なパーツが生え出してますね。
さらに何種類か描いているうちに、まとまったのがこの第一稿。合わせて、車のデザインも進めておきました。この段階では「新世紀GPX サイバーフォーミュラ」に登場するレーシングマシン・ヘルミッショネルのイメージを引きずっていますが、あくまでも様子見程度のデザインです。おそらくSFカーではなくリアルな族車を求められるのだろうなといった予感を持っておりました。
ほぼほぼ羅武流のデザインになっております。また、どうしてこの形状になったかの説明文が書き込まれています。「MAXパワー時、ボディが白くなって特攻服みたいに長ランモードになるとか!!」と好き勝手言ってますね。
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車体とロボットを同時にデザインできたので、とても充実した作業ができました。最初にデザインしたアルカディア製ジャイロゼッターだったので思い入れもひとしおです。初期のラインナップの中で、かなりの色物だっただけにかなりゲームの中でも目立っていたようです。小さなお子さんが一所懸命に族車走らせて不良ロボをドライブさせてる姿を見て目頭が熱くなったのも良い思い出です。
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