
昨今、ほとんど見かけることもなくなりましたが・・・
その昔、「スケバン」とか「レディース」と言われる怖い女子高生やお姐さん達がいました。丈の長いセーラー服や特攻服に身を包んで、ヨーヨー持ってマッポの手先になったり、バイクに乗ったりと悪事の限りを尽くしたとか尽くさないとか。そんなキャラクターが漫画やドラマを賑わせていたのも昭和の御代。花の80年代、不良キャラ全盛期。彼女たちは本当に輝いていました。
筐体ゲーム「超速変形ジャイロゼッター」第3弾にて、そんな「スケバン」型のジャイロゼッターをデザインいたしました。
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今回は、ジャイロゼッター「セリカGT-FOUR」のお話です。
族表記では「邪威露絶陀亜 世離迦」だそうです。TOYOTA自動車のセリカGT-FOURがモチーフ。
開発スタッフに羅武流の不良キャラデザインを気に入っていただけたようで、同系統のジャイロゼッターをお任せ。という流れでの発注だったと思います。
個人的に、正統派なヒーローメカよりも、やや色物寄りの特徴的なモチーフのデザインが得意なので、再びの不良キャラモチーフで、しかもレディース、スケバンというキワモノ(失礼)をデザインできるとあって腕が鳴りました。
スケバンではあるけれど、だいたいツンデレだったり実は可愛いもの好きなキャラクターであることはもはや鉄板だと思われますので、頭部にリボン状のパーツ、手首やお腹にハートマークのワンポイントを入れてかわいらしさを表現しました。
個人的な趣味でポニーテール型にしたのですが、こちらはお昔の大映ドラマ「ポニーテールはふり向かない」のヒロイン、不良ドラマーの麻生未記(演:伊藤かずえ)にあやかっております。・・・・といいつつ個人的にスケバンといえばポニーテールなイメージがありまして。実はさるキャラクターを隠れモチーフとしてます。
知る人ぞ知る漫画なんですが・・・。口は悪いが気風が良くて友達思い、ポニーテールでしかもナイスバディの純情スケバンレディースとして隙がないキャラクターが登場するのですが。それがこちら。
「破壊魔定光」の女定光です。(イラストは矢薙画)
くわしくはリンクで確認していただくとして、実はこの娘を「セリカ」のイメージソースとしてました。近年ではアニメ「ダンボール戦機」の矢沢リコが、古き良きスケバンスタイルを具現化してました。たっぱが低い以外、シルエットで見るとほとんどセリカと同じです。
このポニーテールパーツは、フレキシブルに可動する噴射スラスターと武装ラックを兼ねています。リボンのついた木刀がそのまま武装になるアイデアは今でも気に入っています。
「振るたびに赤リボンからピンクの粒子が桜吹雪のように舞う」
とメモを添えておきましたが、ゲームの必殺技でそれを再現していただいた時はとても感激でした。そしてカッコよかったですね。
スケバン刑事よろしく、腰のホイールパーツがヨーヨーになる設定画を描きました。が、これに関しては流石に要素が多すぎたのか採用されませんでした。
しかし数年後。新2弾で登場した色違いの羅武流「羅武流 仏恥義理(ブッチギリ)」との合体技・ダブルバースト「罵利罵利倍駆」の発動時にセリカのヨーヨーアクションを再現していただけました。
思えば、担当Y氏との打ち合わせで、セリカ修正箇所の赤ペンを入れていただいた画稿の隅っこに
こんな落書きがされていました。この時の思いつきがあのダブルバーストだったのですね(^^
レディースの特徴として、特攻服の要素をメカデザインに落とし込むのに苦労しました。長ランとドカンパンツの組み合わせは全体のシルエットを左右するので、ボリュームの調整が難しかったわけです。
挑戦だったのは、車型ロボットだというのに「バイク=族車」のイメージを取り入れるという点。腰の背後に、バイクのエンジンにマフラーを添えて、着物の帯山のような可愛らしさを。脚部の車輪はバイクの車輪形状の物を装備して同じく四連マフラーをアクセントにしています。
意図して、これらの族車らしさは背中側に回しました。正面からは見えないので、それほど強い印象は残らず、ちょっとしたポイントとしてのデザインバランスを取れたのではないかと思っています。
逆に、正面から見た時に族車のモチーフを印象付けるため、肩パーツに族車のロケットカウル風の装甲を装着しております。このパーツが、セリカの個性的なシルエットとしてとても活きました。
ファイアーパターンも恐る恐るのチャレンジ要素でした。デザインの時点でテクスチャが乗せれるかどうか不明だったそうで、担当さんも悩んだ末、現場判断に委ねることになりました。そして完成したモデルは見事に再現していただけていました(^^
再現されているといえば、ズボン装甲にもかかわらず。ちゃんと地べたに倒れると、ピンクのパンツも見えるというw。思いつきで設定してましたが、そこまできちん拾っていただけるとは開発スタッフの目ざとさに脱帽です。
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こちらからはデザインが完成するまでの流れです。
最初のラフスケッチ。
取り急ぎ、矢薙が持ってるスケバンやレディースの知識(ほとんど漫画とドラマ)を入れるだけ入れるとこんな感じですがいかがでしょうか?的スケッチ。
最初のうちは、アイデアが出てくる限り使われる使われないにかかわらず、なんでもかんでも詰め込んでおく分には問題ありません。このセリカに関しては女性型ロボなだけに相当気持ちが乗っているのがわかります(^^;
二段変身の要素で、長ラン装甲を脱ぐと、軽装サラシ突撃モードになるという。小柄(矢沢リコ)型から長身(女定光)型になるという、ミーハーなアイデアまでさりげなく提示していました。
ややかわいらしい頭身バランスで、男の子受けを狙おうとしてますね。
そしてざっとまとめた第一稿。
このタイミングぐらいで担当さんから目に瞳を入れる指示がありました。ハチマキ、マスクに鋭い眼光。見ようによっては普通に怖い面構えがここで成立しております。全体的にまだメカメカしい印象ですが・・・かわいくするか、かっこよくするかで担当さんと何回かディスカッションを続けていました。
そのバランスのいい感じの落としどころとして提示したのはこちらの第二稿。
ほぼスタイルが確定した決定稿直前ですね。おおむね納得いくバランスになっております。ここから先は降りてきたアイデアをどこまで載せることができるかの勝負でした。
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女性型ジャイロゼッターでスケバンという美味しいモチーフ要素に恵まれた発注でしたので、とても楽しくデザインワークを進めることができました。矢薙の持ちうるスケバンイメージをすべて叩き込むことができた上に、そのほとんどを再現していただいた開発スタッフの度量に感謝です。
コミック版では敵キャラクターのハルカが搭乗してくれて嬉しかったですね。アニメには残念ながら登場することは叶いませんでしたが、確か赤名先生のマイカーが赤いセリカだったんですね。いつか赤名先生専用のジャイロゼッターセリカをデザインできたらなと思います(^^/
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