ジャイロゼッター「ファイアーファイアー」編


「超速変形ジャイロゼッター」という筐体ゲームでメカデザインを担当しておりました。

初稼働の第0弾から、第1弾第2弾と定期的にシリーズが更新されるのがアーケードカードゲームの特徴です。ジャイロゼッターも弾を追うごとに新しい車種、新システムを導入してユーザーを楽しませてくれました。

これまではセダン・スポーツ・ワゴン・エコと4種類の車タイプが登場。車種ごとに性能に一長一短があり、状況や好みに応じてさまざまな車種を使い分けてゲームを楽しむことができます。基本的に市販車、またはアルカディアという架空のメーカーの乗用車が主体だったのですが、第3弾からは新タイプとしてパトカー救急車消防車などの「はたらく車」が追加されました。

乗用車タイプと違って、ドライブモードでは「はたらく車」の特徴を生かした魅力的なギミックを使用できるので、ジャイロゼッターのゲームの幅を格段に広げました。

 

ダイヤペット DK-3109 1/43スケール クラウン警らパトカー     トミカ No.18 日産 NV350 キャラバン 救急車 箱      ダイヤペット DKー5015 空港用大型化学消防

 

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今回は、消防車型ジャイロゼッター「ファイアーファイアー」の出番です。

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メーカーは「アルカディア」。はたらく車は全般、やや近未来をイメージしたオリジナルデザインの車でした。この後も、はしご車や高速パトカー、バスなどさまざまな車種が登場していきます。

 

消防車のすべて (モーターファン別冊 働く自動車シリーズ) 日本の消防車2015 (日本で唯一の消防車グラフィック年鑑) 消防・レスキュー大図鑑 (ワールド・ムック1017)

 

「消防士さんをモチーフにしてくれたらスタイルはお任せします。細くても太くても、リアルでもスーパーでもお好きに料理してください」

・・・という感じのオーダーでしたので、俄然やる気になったのを覚えています。既存メーカーの車種ですと、ボンネットやフロントグリルのデザインに気を配る必要があるので、こうはいきません。

 

矢薙は、子供の頃からロボットアニメが大好きで、人並み以上に知識を持っております。この業界に関わることができたのも、ある意味、好きが高じてそうなったものと言えます。そんなわけですので、アルカディア社製の近未来消防車ロボという設定を戴いただけで、色々とアイデアが浮かんで仕方がなかったです。そして、心の奥底で決めたコンセプトを正直にお伝えいたしますと、この機会に・・・

「自分の好きなアニメロボットの要素をすべてぶち込んでしまえ」

そんなミーハー気分を根底に持ちつつデザインされたのが、この「ファイアーファイアー」だったのです。

 

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やはり消防車といえば、でっかくて頼もしい車体をイメージしますので、おのずと大柄な重量級のボディをチョイス。根底に「びくともしないデカいやつ、頼りになるやつ、いかすやつ」があります。メインデザイナーの石垣純哉氏がデザインを担当していた「ゼノギアス」にも、似たようなスタイルの巨体ロボが登場しておりましたが、その当時大好きな機体だったので大いにリスペクトしています。

隠しモチーフには「消化器」を入れています。僕が知る限り、消防車ロボは数あれど、ほとんどの物が四角基準の角ばったスタイルが多かったと思います。それらのイメージから少しでも離れて、印象に残るようになればと「円柱」パーツ主体の曲面の多いプロポーションを目指しました。

背中のランドセルから、キャノン砲(もしくは放水銃)が出ているあたり、みなさんのよく知っているガンダムの仲間を彷彿とさせます。思えば、機体も赤色ですから印象が似てしまうのは当然ですね。

消防車らしさの一つとして、かかとの部分にY字に展開するアウトリガーを備えています。強力な攻撃をする際に、体を支えることができるかと思い取り付けてみました。ゲーム動画では、バーストアタックの決め技のシーンで使っていただけました。

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補足の設定画稿。俯瞰図や、側面図、武装の詳細やギミックが描かれています。

大型ロボであれば、巨大な武装が似合いそうなものですが、オーダーにより格闘用の武装は小型の斧である「トマホーク」。これは火災現場で障害物を壊すために消防士が使う装備なのです。一方、手持ち銃はモチーフの一つである消化器を思い切ってそのまま横にしたデザインにしております。

さりげない要素ではありますが、肩のホイールパーツ、腰のフンドシパーツ、武装のトマホークには「Y」の文字を入れております。これ、地図記号の「消防署」のマークを表しています。

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こちらは消防車モード。どちらかといえば空港用化学消防車に寄せたデザインとなっています。どことなく第六文明人の遺跡メカを彷彿とさせますね。なお近未来マシンではありますが、それなりにリアルな方向に寄せる必要があったので、現用の消防車や化学消防車のデザインを参考にしております。特に、MORITAの林野火災用消防車コンセプカー「Wildfire Truck」と、オーストラリアはローゼンバウアー社製の空港用大型化学車「パンサー」のかっこよさをなんとか取り込めないものかと四苦八苦していました。

流れ的には、ロボット形態とほぼ並行でデザイン作業をしていました。玩具的な変形はできなくても、変形しそうだと思わせられる形状を模索しすぎて手間取った記憶がございます。そもそも「超速変形」ではありますが・・・変形を考慮したデザインではなくてもよかったのです。それでも変形ロボ的な構造を表現したかったので、キャビンが二つに割れて、両肩になる構造を想定したデザインにしようとあらかじめ決めていました。・・・実は個人的に、玩具化するとどうなるかのシミュレーションまでやってたり(^^;そういうモチベーションは大切です。はい。

 

3Dモデリングされたファイアーファイアー。

ファイアーファイアーのデザインラフスケッチです。最初に出したラフからほとんどイメージが変わっていません。担当の方も、相当ロボットにくわしい方でしたので、デザインしたいコンセプトはすんなり伝わりました。つまるところ「この際、定番の大型ロボやサポートロボのいいとこ取りをしてしまいましょう。」ということになりました。

当初、昔の町火消しが使っていた器具をモチーフとした「サスマタロッド」なる武装を提案していました。要素が多すぎということでボツになりましたが、このコンセプトは同型機の「ラッダーラッダー」に受け継がれることになります。

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「数ある消防ロボ、サイレンビルダー、レスキューファイヤー、マシンロボレスキューは角ばったデザインなので、円柱を基本とした四肢にしてみました。・・・ジオっぽいガンキャノン。武蔵坊弁慶のイメージで、頼れるでかメカみたいな。OAVジャイアントロボじゃないか!!」

・・・というメモがすべてを物語っていて、デザイナーとしてはちょっぴり恥ずかしい行為でしたねw

アイアンマン風の顔を提案していますが、対ハルク用のアーマーの存在はすでに存じていました。よもや映画に登場するだなんてこの時は思ってもみませんでした。

 

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色指定初稿。本来、色はちゃんとしたカラリストの方が指定するのですが、ジャイロゼッターに関してはカラーリングもこちらで任せてもらえたので嬉しかったです。もう赤く塗ると、消防ロボらしさが出てきて頼もしさが増します。合わせて色んなロボットのイメージも滲み出してきます。色の効果はホントにすごいです。

この段階で、車両形態とのデザインの擦り合せを進めています。放水銃が、そのままロボットの肩の大砲になる構造は早くから固めていました。六輪か八輪かで悩んだ形跡がありますね。あらかじめ「はしご車」に車体を流用するという話は伺っていたので、CG作業のためにわかりやすいパーツ分割をこの時点で意識しています。

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第二稿。あらかたシルエットがまとまりつつあります。足元が寂しかったので、アウトリガーパーツをつけて収まりがかなりよくなりました。腕にもアーマーを追加してボリュームを増してます。注目していただきたい点は、左胸の消火栓の意匠と、右隅にメモで描かれたスプリンクラー風バリア機能。分かる人には、何をモチーフにしているか何となく分かるのではないでしょうか?

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早い段階からイメージとしてスケッチした消防車形態。SFメカを意識しすぎ、キャビンが面白い形になっております。最終的に、こちらは角張らせる方向でまとめることになりましたが・・・車体の各所にミサイルポッドを搭載したくてたまりませんでした。

 

こうしてまとまった「ファイアーファイアー」ですが、想定した以上に理想的なサポートマッチョロボに仕上げることができました。根本からのオリジナルロボットというよりも、自分が子供の頃から慣れ親しんだスーパーロボットやリアルロボットのエッセンスを凝縮していい感じに再構築するという、ある種アマチュアライクなスタンスでのデザイン作業でしたが、こうした行為もまた、ひとつのデザインの回答なのではないかと思っております。

こうしたデザインの実現を成せたこと、それを許容していただけたこと、ジャイロゼッター開発スタッフの皆様に感謝です。

 

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そんなファイアーファイアーですが、実はガレージキット化しようとされた方がいらっしゃいました。

ワンダーフェスティバルという夏・冬に開催される大規模な模型やガレージキットの大会がありまして。「当日版権」というシステムで大会開催中の限定された期間に限り版権元さんの許可をいただいて、自作のキットを販売することができるそうなんです。

製作者はtas_kさん。

その大会を目指してファイアーファイアーのガレージキット化を目指していたそうなんです。諸事情により販売までは至りませんでしたが、開発途中の3Dモデリング画像の掲載許可をいただけました。未完成だということですが、ソリッドにまとめられた迫力のプロポーションがたまりません。こうして立体化を目指してくれる方がいただけでもデザイナー冥利につきますね(^^ありがとうございます。

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いつか本当に立体化されたらないいなぁ。と・・・せつに願います(^^

2 thoughts on “ジャイロゼッター「ファイアーファイアー」編

  1. ファイアーファイアーの記事、拝読させて頂きました。

    自分はジャイロゼッターにどっぷり浸かってた人種なのですが、始めた時期がちょうど3弾稼働の頃でした。
    ファイアーファイアーを初めて見たのは、友達のカードコレクションだったと思います。
    消防車から変形するどっしり系の超重量級ロボという個人的にドツボな見た目、ゲーム内でも他にはない大きな特徴を持つなど、ジャイロにハマる大きなキッカケになりました。
    そして「ファイアーファイアーを相棒に頑張るぞ」と腹に決め、以来稼働終了まで下手なりに必死になって練習し続け、あちこちの大会をめぐる内にジャイロを通じて多くの友達を作ることが出来ました。
    その時の友達たちとは、ジャイロの稼働が終わってしまった今でも、よく会って遊ぶ仲です。
    これも矢薙先生がデザインされたファイアーファイアーのおかげです、本当にありがとうございました。

    またいつの日にか、あの赤い筐体でファイアーファイアーと共に戦う時が来たらいいな、と今も願っております。

    最後に矢薙先生の益々のご活躍をお祈り申し上げます。
    最後までお読みいただき、ありがとうございました。

  2. スーさんコメント残してくれてありがとうございます。あの頃が懐かしいですね~(^^ ゲームセンターに集まっていた皆さん仲良さそうで素敵でした!

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